菅直人首相は、わが国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加することを「平成の開国」と謳っていますが、果たしてそうでしょうか。
この問題については、昨年の11月以来「不参加でよろしい」と明確に申して参りましたが、あれ以来状況が少し変わっています。中華人民共和国が人民元操作を崩せない(そもそも人民元をどれだけ刷ったか分かっていない)ことから、また大韓民国は米韓FTA(自由貿易協定)で12月3日に合意しましたから、彼らのTPP参加はありません。そこで米国は、日本の参加に固執し始めたのです。
中共は論外にせよ、韓国がTPPに参加しないのは、決して政府が「鎖国」「世界の孤児」化を図ったからではなく、米国にとってもう用がないからでしょう。日本では、TPPに参加しなければ「経済発展の一層の立ち後れを招く」と政治家や一部の文化人がメディア報道に乗せて発言しており、特にこれらへの批判は農業界からのみという現状にあって、時には彼らが「競争から逃げる既得権者たち」と揶揄されるほどです。
では、本当にTPP参加は日本の得にならないのか、或いは農業だけが不利であり製造業は大躍進の機となりうるのでしょうか? この疑問に、京都大学大学院工学研究科の中野剛志助教に伺ったお話などを元にして明解にお答えし、提言することにしましょう。
TPPはいわゆる「経済小国」4カ国間の締結に始まり、その後に越国(ヴェト・ナム)や馬国(マレーシア)、秘国(ペルー)、米国、豪州が加わりましたが、最も大きな国内総生産の値(67%)と内需の値(73%)を誇るのは当然米国であり、これに次ぐ豪州でさえ、それぞれ5%と3.7%の規模に過ぎません。残る7カ国を合わせても、たったの4%と内需に至っては0.1%です。
これに日本が参加して、豪州と外需依存の7小国を合わせたわずか3.8%の内需に向かって、一体何を輸出拡大出来るというのでしょうか。製造業にとっても、何の旨味もない話であることがこれで分かります。
では、日本は米国に売りつけることが出来ないでしょうか? バラク・オバマ大統領はTPPを自身の輸出拡大政策に利用すると明言しており、米国が物を買わせたい国は、萎んだと言っても国内総生産24%と内需23%を誇るわが国に他なりません。残る参加国はまるでお話しにならないのです。
講和発効と同時に無効のはずの日本国憲法を放置して対米従属に甘んじているようなわが国政府が、この米国政府の猛烈な方針に対抗し、私たちの経済活動の防波堤を築いてくれると思いますか? その防波堤(関税)を産品の例外なく壊すのがTPPであり、過去の所業を見直しても、日本政府を信用出来る要素などありません。
わが国の関税は俗に高いと言われてきましたが、欧州連合(EU)各国のそれに比べて実は産品平均値で低く、欧州各国は高い関税を維持してでも自国の農業を守ってきました。この保護政策を「日本だけはやってはいけない」と米国政府に言われ、その通りにしなければならない理由など本来なく、実は米国も関税問題よりドル安を甘受、または誘導して輸出を拡大するほか、国内の失業者問題などに対処出来なくなり始めているに過ぎないのです。
それでもTPP参加を目指す政府と、TPP参加の世論形成を目指すメディアがなぜわが国にあるのか、という占領統治体制の維持に端緒がある問題に、一切の疑問を呈さない「騙される」体質こそ、私たちの身体を蝕んでいます。
よろしいですか。私たちは今、慢性化した物価・給与下落の悪循環(デフレ・スパイラル)に悩まされています。これに拍車をかけるのがTPPであり、対外不平等と戦って関税自主権を獲得した明治の開国以来先人たちの努力と、関税自主権を手放そうとする菅内閣の言う「平成の開国」は、呆れるほど異質であることを、お願いですから皆様、自覚して下さい。
平成23年1月24日
真正保守政策研究所代表 遠藤健太郎
遠藤健太郎オフィシャルブログ 1月24日記事より一部改変
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