【オピニオン】TPPの参加に反対します

 菅直人首相は、わが国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加することを「平成の開国」と謳っていますが、果たしてそうでしょうか。

 国内では、TPPに参加しなければ「経済発展の一層の立ち後れを招く」と政治家や一部の文化人がメディア報道に乗せて発言しており、特にこれらへの批判は農業界からのみという現状にあって、時には彼らが「競争から逃げる既得権者たち」「保護する価値もない経済的弱者」と揶揄されるほどです。

 では、本当にTPP参加は日本の得にならないのか、或いは農業だけが不利であり製造業は大躍進の機となりうるのでしょうか? この疑問に、京都大学大学院工学研究科の中野剛志助教に伺ったお話などを元にして明解にお答えし、提言することにしましょう。

 TPPはいわゆる「経済小国」4カ国間の締結に始まり、その後に越国(ヴェト・ナム)や馬国(マレーシア)、秘国(ペルー)、米国、豪州が加わりましたが、最も大きな国内総生産の値(67%)と内需の値(73%)を誇るのは当然米国であり、これに次ぐ豪州でさえ、それぞれ5%と3.7%の規模に過ぎません。残る7カ国を合わせても、たったの4%と内需に至っては0.1%です。

 これに日本が参加して、豪州と外需依存の7小国を合わせたわずか3.8%の内需に向かって、一体何を輸出拡大出来るというのでしょうか。製造業にとっても、何の旨味もない話であることがこれで分かります。

 では、日本は米国に売りつけることが出来ないでしょうか? バラク・オバマ大統領はTPPを自身の輸出拡大政策に利用すると明言しており、米国が物を買わせたい国は、萎んだと言っても国内総生産24%と内需23%を誇るわが国に他なりません。残る参加国はまるでお話しにならないのです。

 講和発効と同時に無効のはずの日本国憲法を放置して対米従属に甘んじているようなわが国政府が、この米国政府の猛烈な方針に対抗し、私たちの経済活動の防波堤を築いてくれると思いますか? その防波堤(関税)を産品の例外なく壊すのがTPPであり、過去の所業を見直しても、日本政府を信用出来る要素などありません。

 わが国の関税は俗に高いと言われてきましたが、欧州連合(EU)各国のそれに比べて実は産品平均値で低く、欧州各国は高い関税を維持してでも自国の農業を守ってきました。この保護政策を「日本だけはやってはいけない」と米国政府に言われ、その通りにしなければならない理由など本来なく、実は米国も関税問題よりドル安を甘受、または誘導して輸出を拡大するほか、国内の失業者問題などに対処出来なくなり始めているに過ぎないのです。

 それでもTPP参加を目指す政府と、TPP参加の世論形成を目指すメディアがなぜわが国にあるのか、という占領統治体制の維持に端緒がある問題に、一切の疑問を呈さない「騙される」体質こそ、私たちの身体を蝕んでいます。

 よろしいですか。私たちは今、慢性化した物価・給与下落の悪循環(デフレ・スパイラル)に悩まされています。これに拍車をかけるのがTPPであり、対外不平等と戦って関税自主権を獲得した明治の開国以来先人たちの努力と、関税自主権を手放そうとする菅内閣の言う「平成の開国」は、呆れるほど異質であることを、お願いですから皆様、自覚して下さい。

遠藤健太郎オフィシャルブログ 1月24日記事より一部改変

——————————以下、10月24日追記記事より抜粋

 http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20101201_1.pdf
 ▲日本医師会:日本政府のTPP参加検討に対する問題提起(PDF)

 日本医師会と私の間にまさか何の利害関係もないことを前提としてお断わりしておきますが、このような角度から環太平洋経済連携協定(TPP)に反対する声は必要です。民主党の前原誠司政調会長が煽り続けているような農業問題だけが、決してTPPの障害ではありません。

 米国にはこの国民皆保険制度がなく、よって保険と金融が密接に結びついてきたことは、皆様もご承知の通りです。医療や保険の分野で、一方的にわが国政府の福祉政策がTPP参加国企業の不利益をもたらすと判断される場合、その防護壁は簡単に取り払われてしまいます。

 そうすれば、参加国企業の個人保険(プライヴェート・インシュアランス)加入が促進され、国民皆保険制度は解体、所得どころか生命の「格差」がわが国でも生じるでしょう。

 民主党野田内閣が参加を表明しようとしているTPPには、当初4カ国によって作成・発効した全20章から成る参加国合意文書(アグリーメント)が既にあり、章ごとに複数条文が存在しています。

 しかし、政府はこの英文原文を国語訳して公開もせず、私たちに何の情報も与えないまま、メディアもただ漠然と報じているような状態です。この現状に風穴を開けられたのが、分析家の青木文鷹氏でした。

 http://www.amazon.co.jp/dp/4594063683?tag=23ha……
 ▲Amazon.co.jp:TPPが日本を壊す(扶桑社新書)廣宮孝信、青木文鷹

 また、氏は「米国の思惑」だけに反対することは危険であり、米国政府が参加見送りを表明すればあたかも「日本の一人勝ち協定」であるかのように演出され、参加議論の障壁は取り除かれるが、日本参加の後に何食わぬ顔で米国に参加されればおしまいだとも警告しています。

 全くその通りでしょう。経済・金融に関する協定に於いて、多国籍企業群の動かす米国政府が「使える手は全部使う」ことは、北米自由貿易協定(NAFTA)の例を見ても全世界の知るところです。米国はそう出来るだけの基軸通貨を持ち、よって軍事力を有しているのですから仕方がありません。一方わが国には、円はあっても日本国憲法(占領憲法)によって軍はおろか交戦権すらないのです。

 それでいて経済規模の大きなわが国は、TPP合意にある市場開放を強制され、地方公共事業も日本人の雇用さえもその対象となり、ほとんど根こそぎ外国企業と外国人に持っていかれるでしょう。

 農家の皆様のみならず、会社勤めのそこのあなた、絶対にTPP参加には反対して下さい。もはや1億の国民が反対の声を上げるほか、参加を止めることは出来ない状態に突入しているのです。

 真正保守政策研究所代表 遠藤健太郎

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活動報告,理念と主張 — 遠藤 健太郎 @ 2月28日 07:30:41

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